2026年1月、クロノ・トリガー30周年を記念したオーケストラコンサート「CHRONO TRIGGER Orchestra Concert 時を超える旋律」が東京国際フォーラムで開催された。
行きたかった。本当に行きたかった。
でも仕事のスケジュール的にどうしても都合がつかず、泣く泣く断念。代わりにオフィシャルパンフレットだけは確保した。会場で完売して重版がかかったほどの人気だったから、手に入っただけでもよしとする。
届いたダンボールを開けて、パンフレットを開いた瞬間に声が出た。
ただ、僕がこのパンフレットを買った理由は、純粋な記念グッズとしてではない。鳥山明先生のイメージアートを「研究素材」として手元に置きたかったからだ。
大判で見る鳥山イラストの破壊力
このパンフレットには、鳥山明先生によるクロノ・トリガーのイメージイラストがアートギャラリーとして収録されている。
で、これがとにかくデカい。
過去の画集──「鳥山明の世界」や各種攻略本、Vジャンプの特集号など──でもクロノ・トリガーのイラストは収録されてきたけど、ここまで大きなサイズで一枚絵として見られる機会はほとんどなかった。小さいサイズだと「なんとなくカッコいい絵」で終わってしまうところが、大判になると解像度がまるで違う。
線の入り方、色の重ね方、筆のタッチ一つひとつが見える。これは画集のページをめくるのとはまったく別の体験だ。
鳥山タッチを「分解」する
僕が鳥山先生のイラストを見るとき、どうしても職業的な目で見てしまう。「ここの線はこう引いてるのか」「この影の落とし方はドラゴンボールのときと違うな」「メカのディテールの入れ方にクロノ・トリガー特有の遊びがある」──そういう観察が止まらなくなる。
クロノ・トリガーのイラストが特別なのは、ドラゴンボールやドラゴンクエストとは明らかに異なるアプローチで描かれている点だ。キャラクターの身体のプロポーション、メカと人物の絡み方、背景の空気感。どれも「鳥山明」でありながら、ドラゴンボールのそれとは違うレイヤーの表現が入っている。
特に構図。右前から左奥、そして右奥へと流れるキャラクター配置は、複数のイラストで一貫して使われていて、鳥山先生の構図に対する設計思想が読み取れる。視線の誘導が本当に巧みで、見る人が自然とキャラクターの関係性やストーリーの流れを「感じる」ようになっている。
これを大判サイズで見られることの意味は、絵を描く人間にしかわからないかもしれない。
コンサートには行けなくても
パンフレットには坂口博信さん、堀井雄二さん、光田康典さんの30周年に寄せたスペシャルメッセージも収録されていて、読み物としても充実している。堀井さんのコメントを読むと、あの時代のスクウェアとエニックスがまだ別の会社だった頃の、ドリームプロジェクトの熱量が伝わってくる。
クロノ・トリガーは1995年の作品だから、もう30年以上前になる。でも鳥山先生のイラストは一切古くならない。むしろ今見たほうが、あの線の凄さがわかる。技術が上がれば上がるほど、あの「シンプルに見えて情報量が異常に多い線」の恐ろしさが身に染みる。
鳥山タッチを追いかけている人間として、このパンフレットは間違いなく「買い」だった。会場で完売するのも納得。重版分がe-STOREで今後販売される予定なので、気になる人はチェックしてみてほしい。
絵を描く人にとっては、画集以上の教科書になると思う。

ただマールの口元の汚れは修正してほしい。笑
